今日のバイト、10時までだよね。

ちょっと遅いけど、陸の家行ってみようかな?

岡本さんに、電話で様子を聞いてからの方がいいのかもしれない。

岡本さんっていうのは、陸の家のお手伝いさん。


はじめてヤツの家に行った時から、色々とお世話になっていて、お手伝いさんの中では1番親しい人なんだ。


大丈夫だよね、あの時みたいに……過労とかだよね?



「社長さん、良くなるといいですね」


そう言って一礼をし、小田さんの部屋からは引き下がった。



早く上がりたいのを我慢して、黙々と仕事をやる。


「杏ちゃん、どうしたの?」


あたしの様子がおかしいと思ったのか、万里さんが聞いてきた。


「いいえ、なんでもないですよ」


フルフルと顔を横に振って、笑顔を見せる。


「そう……?」


心配そうな表情の彼女を、なんとかかわして、バイトを終わらせた。




着替えを済ませて、ケータイを開く。

着信は誰からもなかった。

てことは、陸は大丈夫だって考えていいの?


着信履歴から、ヤツのケータイの番号を探した。

発信ボタンを押そうか迷う。


「……行ってみようか」



寝ててもいい。


顔を見るだけでいいから。

こんな時間に行くのは、非常識かなって思うけど……一目見たいって思った。


そう考えたら、さっさとお店を出て、陸の家に向かう。


早く行った方がいいと考えて、自然と早足になった。