「……ウソでしょ?」

陸さん……そんなことありえないよ?

それが、理由を聞いてからのあたしの第一声。

あたしのいたクラスじゃ、そんなことありえなかった……。

めんどくさがり屋の男子だって、一度くらいは包丁持つよ?


「ウソ言ってどーすんだよ。全部ホントの話」

あたしが信じないからか、ちょっと拗ねた顔をする陸。

……ホントなんだ。

ヤツの表情で、事実だったと理解する。



だけどさ……信じられる?

陸の料理をしたことがない理由はこうだ。


陸は、小学生の時から女の子にモテモテだった。

小学校高学年になれば、家庭科が始まる。

もちろん調理実習もある。

グループに分かれて作るのだが……。

陸に気に入られたい女の子達がたっくさんいて、彼女たちは、張り切って料理をする。

料理ができることをアピールしたかったらしい。

だからか…………。

陸のクラスの男子たちは、女子たちから、ほとんど何もさせてもらえない。

ましてや、陸のいるグループでは、陸には一切調理をさせなかったらしい。


だから、調理実習は、いつも見てるだけで終わっていたという。