キンキンに冷えた小指が、だんだんと温かくなっていく。


あぁ……なんか、いいなぁ。


自分の描いていた恋人同士の関係が、いまここにある。


男の人は女の人より一歩リードして歩いて、その後を小さな歩幅で一生懸命ついていく。


男の人はそれに気づき、歩くスピードを緩めてくれる。


なんでもないような事に、ずっと憧れていた。


「誠先輩」


「どうしたの?」


「やっぱり、もう少し歩きませんか?」


「え?」


「もうちょっと、こうして歩いていたいです」


私の言葉に、誠先輩はアハ。と笑って、いいよ。とうなずいた。