「いいえ、今来たところです」


そう言って時間を確認すると、約束の5分前だった。


「今日寒いよね。どこか……ファミレスでも行こうか」


「え……?」


「どうしたの? 嫌?」


「いえ、そうじゃなくて」


ついさっき自分が考えていたことをそのまま言われて、少し驚いた。


その後、誠先輩はいつも通り私の手を握って、「冷たいね」と言いながら、歩き始めた。


「女の子って、指先冷たい子多いよね」


「そうなんですよねぇ。男の人は冬でも暖かい……」


誠先輩は、握っていた手をずらし、私の指先を暖めるように握り締めた。