中腰になった誠先輩はそのまま目をつむり、「今は、俺を利用していいよ」と言った。


「え?」


「あいつを忘れるために、付き合ってくれていいよ」


……え?


「ただし」


誠先輩が目を開き、私の頬を両手で包み込んだ。


大きくて、すごく暖かい。


「いつか必ず、俺を好きになって」


そう言う誠先輩は、すごく辛そうな顔をしていて、思わず私は先輩の大きな背中に手を回した。


誠先輩の優しさが、痛い。


「私……好きですよ」


痛い気持ちを我慢して、必死で言葉を探る。


「誠先輩のこと、今も、すごく好きですよ。利用なんて、しないです」