もちろん『Angie』にだって要やタケ以外にゆずを指名している客はいる。


サキとの一件が落ち着き、嫌がらせもなくなってからは順調に顧客も付き始めたのだ。


それはキャバクラに勤める以上大事なことだし、喜ばなくちゃいけないことだというのはわかっているのだけれど。


要は素直には喜べなかった。


それがなぜか。


その理由に気付きながらも、要はまた素直に認めることができなかった。


自分のその思いに気付いたら、ゆずはどう思うだろう。


ゆずにとって、自分は客であり、友達であると―――


要はそう思っていた。