その後、俺は少し寄り道をしてみる。


風を感じてみる、
空に手を伸ばして見る、
…届くわけねぇか。
大きく息を吸ってみる。



今しか出来ない。

俺が逝った、"無"には
風も空も空気もない。


有るのは一つ。
何処までも続く暗闇だけ。




「龍ちゃん」


そこには律華が心配そうな顔をして立っていた。


いつの間にか
俺の足はひまわりに向かっていたようだ。



「圭ちゃんが一人で泣きながら帰って来たから…なんかあったのかと思って」



そんな律華の頭に手を乗っけて髪をクシャクシャにする。


「ちょっと! 何するのよ!? 髪が…」


「ごめん」


俺は律華の髪を直しながら言った。


「ごめんな」


律華は静かに涙を流した。
髪をクシャクシャにして
どさくさに紛れて謝ったつもりだったけどやっぱ泣かせちまうんだな。



圭太。
俺、もう泣かせちまったよ。
俺だって何も出来ねぇよ。