「食欲どう? 食えそうな分だけでいいけん、薬は、」

「これ水島くんが作ったの?」


遮って尋ねると、水島くんがふはっと吹き出した。


「じゃなきゃ、なんのために台所借りたかわからんが!」


くしゃっとした笑顔に、胸がぎゅっと押し潰されたように苦しくなる。熱く感じる顔や体が熱のせいなのか、別のもののせいなのか、区別もできない。


「あの、水島くん。あり……ありがとう……」


うわあ声ちっちゃい。目まで泳がせちゃった。


「ん」

短く返事をした水島くんがどうしてか、嬉しそうに笑う。


艶のある黒い瞳は、すごく柔らかいものに見える。もったいないくらい、心の芯まで届く優しさまで帯びている。


あたたかなそれを、こんなに弱っているときじゃなければ、痛いなんて感じなかった。


「……いただきます」

「どうぞーって、万代が買ってきたおかゆに色々混ぜちょーだけ。味濃かったらごめん」


そう言う必要はないくらい、卵粥はダシがきいていて、ちょうどいい味付けだった。


かつおぶしと、醤油と、たぶん塩も少量入ってる。

これが水島くんのお母さんの味なのかなぁ……。


ちまちまと食べ進める最中、水島くんはずっと携帯をいじっていた。そのうち、くすりと忍び笑いが聞こえたので目を遣ると、気付いた水島くんが微笑む。