「事実がどうであっても噂が立った以上、様子見するしかないね。3人の問題だもん」

「りっちゃん……」

「あたしは薄情な野次馬だからさ。結果が出るまで介入はしないからね?」


彼女らしい答えだと思う。でも。


「わたしはどうすればいい……?」

「そのくらい自分で決めなっ」


こういうとき、わたしは変わってないなって感じる。どっちつかずの優柔不断。自分の意志さえ一定に保てない。


3人の問題だというのは正論だと思うし、わたしが首を突っ込むべきじゃないのかもしれない。


だけど茫漠とした不安が足元を底なし沼に変えるようで、恐怖から早く抜け出したくなってしまうんだ。




「みくるちゃんっ」


3限目が始まる前の休み時間、教室の出入り口でみくるちゃんに行き合った。


「よかった! 今探しに行こうと、」


ぎくりとした。目を合わせようとしないみくるちゃんの瞳が潤んでいる。


「え、ど、どうしたのっ!?」


みくるちゃんは弱々しく頭を左右に振った。


まさかもう誰かに野次を飛ばされたとか……。


「もしかして泣いてんの?」


びくりと肩を震わせたみくるちゃんの背後を、島崎くんが通りかかった。


「なんで? 俺、正直に言ってやっただけなのに」


……なに? みくるちゃんが涙ぐんでいるのは、島崎くんのせいってこと?


「現実見ろよ。瞬はそこそこモテるし、友達も多い。わかってて付き合いたいと思ったのはアンタだろ」

「――っなにも知らないくせに口出さないで!!」


止めに入ればよかったのに、涙目のみくるちゃんに睨まれても動じない島崎くんから、目を離せなかった。