――みくるちゃんが瞬の親友、ハカセに乗り換えた。


衝撃の噂が事実かと問い詰められたのは、瞬とみくるちゃんが喧嘩中だと知った翌日のことだった。



「どういうことなの!?」

「落ち着きなってば。幼なじみくんは『はあ? 別れてねえよ』ってはっきり言ったんでしょ」

「じゃあどうしてこんな噂が流れてるのっ」


ふたりきりの空き教室で、りっちゃんは肩をすくめる。


みくるちゃんのバッグはあったのに、どこにもいない。1限目も出席しなかった。電話にも出てくれない。


「別れてないのは確かじゃん。それでも彼女ちゃんが出てこないってことは、なんかあるんじゃない? 本当にメガネくんに乗り換える予定だったとか」

「りっちゃんまで噂を信じるの!?」

「まるっと信じてはいないけど、疑ってはいるね。そういう人たくさんいると思うよ」


だからこそ朝から噂で持ち切りだと言っているみたい。


信憑性があるってこと? でもそんなの、仲がいいからって程度じゃないの?


「昨日さ、万代も変に思ったでしょ。メガネくんと彼女ちゃんの態度。明らかにお互いのこと避けてたじゃん」

「……思ったけど、」

「あと、覚えてる? メガネくんに『りっちゃんから見た俺ってどんな感じ?』って訊かれたって話したじゃん」


頷けばりっちゃんは首の後ろを掻き、重いため息をつく。


「あんまり憶測で話したくないけど、今思うと親友の彼女を好きな自分に悩んでたのかなって思うんだよ」

「そう、なの、かな」