「なにもねえ。同じクラスの奴に告られはしたけど、断った」


じゃあどうして喧嘩になるのか、答えは出ている。


「もしかして、中等部で一緒に日直やってた子?」

「そうだよ。断ったけど、今まで通りでいたいって言われて無下にはできねえだろ。それでみくるがブチ切れた」


やっぱり巻き子ちゃんか。


中等部から仲良くしていた子に友達でいたいって言われたら、瞬に断る理由はない。巻き子ちゃんが、みくるちゃんを悪く言おうものなら黙っていないだろうけど……。


「んぬぅうううう」

「なんでお前が頭抱えんだよ」


だって瞬、知らないんだもん。

女子トイレ事件の首謀者は巻き子ちゃんだと言ってもいいくらいなのに、瞬がいまだにあの子と友達でいるってことは、みくるちゃんはそういう風に話していないってことになる。


でも女子トイレでの陰口は、みくるちゃんへの宣戦布告とも言えるから、実際わたし自身は巻き子ちゃんに嫌われているのかも定かじゃないしな。


「瞬は、その、巻き子ちゃんのこと、好きなの?」

「はあ? ダチに好きも嫌いもあるか」

「う、んぬぅうう」

「だからなんなんだよ、さっきからっ!」

「瞬がね、なんとも思ってないのはわかったけど……みくるちゃんはなにか言ってこないのかなあ、と」

「だから不機嫌なんだよ。『そんなにあの子と仲良くしたいんだ?』とか訊いてくるだけで」


だけってことはないでしょう……。