21時半を回ったことを確認し、レースのカーテンがひるがえるのを眺める。
今日は少し予習してから寝ようかな。貸してもらった漫画は、瞬が我が物顔でベッドに寝転がって読んでるし。
「その漫画、りっちゃんもみくるちゃんもすごく盛り上がってて――…そういえば瞬、なにか知ってる?」
「なにかってなんだよ」
「その場にね、ハカセもいたんだけど。みくるちゃんとひと言も話さなかったから、不思議に思って」
「知らね。喧嘩でもしたんじゃねえの? あいつらも10年近くつるんでんだから、べつに不思議じゃねえだろ」
そういうもの? 水島くんに用って、相談だったのかな。
「つうか喧嘩してるって言ったら俺とみくるだけどな」
「――えっ!? けっ……え!? そうなの!?」
「驚きすぎだろ」
「だって、そんなそぶり全く見せなかったじゃない! いつから!? 3日前に勉強会したばっかりだよ!?」
「勉強会んときはただの冷戦」
「で、でもふつうに話して……」
「ねえよ。あの日は俺、みくると1対1で話してねえぞ」
そう言われるとそうかもしれない。水島くんがいないことを理由に席を立ったのも、喧嘩中だったから?
「理由は訊いてもいい……?」
瞬は漫画をわたしに返し、ごろんと仰向けになる。
開かれたままの漫画に目を通せば、そこには涙ぐむ主人公の女の子が描かれていた。どうやら恋敵とひと悶着あった回の話らしい。
「瞬……誰となにがあったの……」