下卑た笑みを浮かべ、シェラへと近づく六人の男たち。魔女であろう先頭の男は誇らしげに歩み寄る。
「あの魔女が厄介だな」
ユェの能力は人の動きを操る指揮者〈ゴーシュ〉。石などの命なき物や、能力そのものは操れない。
しかし彼は恐れない。自身の持つ力の使い方を知っているからだ。ゴーシュだけではない、銃術や剣術を。
過剰にも達するほどの自信。
「いや、いいか。新人の動きは不慣れの所為で不規則。詠んでも惑わされるだけだ」
一人呟き、賊の動きを物陰で伺っていたのをやめた。
「あん? なんだぁ、あのガキ」
自分たちの背後に一早く気づいたのはリーダー。しかしユェは動じず、腕を振り上げ構える。
「おいおい坊ちゃん、こんな所に来ちゃダメだよ。どこの坊ちゃんだい?」
「なに。名乗るほどの者じゃないさ」
嘲笑いながらユェへ近付く賊の一人。哀れとでも言いたげにユェは薄ら笑う。
「あん? なに言ってやがんだ。このガキ……、ん?」
「なにしてやがんだ! 顔を見られてる、殺しちまえ!」
「待てハンス、妙だ!」
「アァ!? なにがだ、ボケ!」
「身体が動かせねぇ!」
慌てふためく賊を見、さらに彼は顔を二ヤケさせる。
面白くて堪らないのだ。捕食する側の蜘蛛となる快感が。
「お前らも俺と同じで小さいな」
見下すかのようにユェは笑い、目の前の小さき蛾を踊らせる。
懐に入れられた拳銃(リボルバー)を出させ、ハンマーを引き起こさせる。
「嫌だ、死にたくないぃぃぃい!」
叫びも虚しく、先の短き銃口は男のこめかみへと向けられ…… 。
「永别了(ヨンビェラ)、醜き蛾よ」
乾いた破裂音。轟く空気。物語を紡ぐ少年は、ただほくそ笑むだけだった。