賊の後をつけるユェ。すでに地方で盗賊としての名が上がっていた彼にしてみれば、ただの賊を尾行するのなんてわけなかった。
そして国の入り口に居た門番三人を殺し、不法入国を行う賊。ユェもそれに便乗する。
初めて入るフェンダリアは、木々もそこそこにむき出しの地面。木やレンガで作られた家々が建ち並び、城下町全体が大きな階段の様になっていた。
一番上に建つのが城なのだろう。大きく古めかしい城が取り残されたかの様に建っている。
「姫様ぁ! まったく、今日もどこへ向かわれたのか」
昨日と同じ中年男性が城下を練り歩き、その隣を賊達は嫌な笑みを絶やさずすれ違う。 ユェは見つからないように物陰へと隠れた。
男のあの様子だと、もう既に昨日の娘は抜け出したのだろうとユェは推測する。同時に一つの確信を得た。昨日の娘はフェンダリアの王女だと。
辺りを見るにあまり裕福ではない城下。取り残された城。貴族の類いは見当たらない。それ故に目立つのだ。姫にしては素朴な衣装でも。
中年男性が自分から離れた地点を通過するのを見送り、尾行を続ける。