部活を引退した俺は彼女との接点が少なくなった


それでも、いいようで悪いもの
日向葉月の噂は3年まで伝わってきた


“また中庭で告られてたよ。氷の女”


“性格はともかく、氷の姫はやっぱ美人だよな”


彼女は女子からは氷の女 男子からは氷の姫と呼ばれ始めた


感情が表情に出にくく、自分からは多くを話さない彼女の世間一般のイメージは“冷たい”
整いすぎた容姿も彼女のイメージを更に後押しした


俺は彼女の名前がでるたびに、いつも冷や冷やしていた


“いつか彼氏ができるんじゃないか”


そんなに気になるなら告白でもしてしまえばいいと、俺の気持ちに気がついた橋元はケラケラと俺を嘲笑う


それが出来るなら、こうして噂話に耳を大きくしたりはしない


彼女は誰の告白も受けない


その理由はいつも同じ


“興味がないから”


勝算のない勝負はしたくない
でも、彼女に触れたい
俺のものにしたい
あの真っ直ぐな瞳で、俺だけを見つめてほしい


欲求は膨れるばかりで
一向に解消されなかった