「いや、全然わかってない」


だけど、答えた後すぐに訴えられた否定。

そうやって凪兎は否定するけど、だったら凪兎は全部わかってる?



話が通じ合えないことが悲しくて、どんどん消えてしまう笑顔。

もう、笑えないよ。

悲しいのに、笑顔なんてつくれない。



我慢していた感情が、フタを壊して溢れ出す。

ベッドのシーツをぎゅっと握りしめた手が、かすかに震え始めて。



「わかってないのは凪兎のほうだよ!」

叫ぶように、口を開けば言葉は簡単に飛び出してきた。


「いきなり、敵だからもう会わないとか、ずっと仲良くしてた人に言われたあたしの気持ちがわかる!?」

鼻の奥がツンとして、滲んだ視界。


「敵だから会っちゃいけないとか誰が決めたの!?
凪兎は自分勝手すぎるよ」

流れた涙を拭うことなく、あたしはそばに置いた荷物からライターを取り出した。



どうにもできない。

もどかしくて、どうすればいいか、どうしたいのかが見えなくなっちゃう。


最初から2つ外れていたブラウスのボタンを、さらに1つ外す。

こんなに憎いと思ったのは、初めてだった。



「失うものがあるなら、華なんてほしくない……」


黒い蓮花を刻んだ自分自身が、何よりも憎い。