凪兎は最初から、あたしを知っていた。
あたしが黒蓮華だってことを、知っていて近づいたんだよね?
亜蓮と関係があったにせよ、どうして敵方のあたしと仲良くしてくれたんだろう。
アルバムを閉じると同時に、響いてきた階段をのぼる足音。
凪兎……、帰ってきたのかな。
あぁどうしよう、また緊張してきちゃったじゃん。
落ち着けあたし。
胸の前で両手を握りしめて深呼吸。
ドアが開くのは予想よりも唐突で、ものすごく早かった。
「だから知らないって。
くっついてくんな、いいから離れろよ」
「だって、プリンが!」
「買いに行けよ」
「今お金な───」
お姉さんの言葉を遮るように、バチンとドアを閉める。
またプリンか……。
前にもプリンのことでケンカしてたような。
閉めたドアの前で、ため息を零す凪兎。
会っていないのはほんの数日なのに、ずいぶん久しぶりに感じられる。
振り返って、そこでやっと相手はあたしに気づいたみたい。
目を見開いて、一瞬ビクッと震えてから口を開いた。
「は?なんで、いんの?」