せっかく断ち切るために来たのに。

やっと前に進めそうなのに。



やめて。

ぬくもりを押し返して距離をとる。


あたしだって、ずっとずっと好きだった。

けど、もうダメなんだってあきらめた。

すっごくつらくて、どうしても忘れられなかった。



強制するわけでもなく、拒絶すればその通りに離れてくれる。

立ち上がって後退るあたしは、亜蓮を見れないまま落としてしまった荷物を手に取った。


伝えたいことはあっても、上手く言えない。

冗談でしょ、なんて笑えたら、ちょっとくらいは楽だったのかな。


もっと、綺麗に嘘がつければいいのに。

冗談じゃないことが感じとれるから、尚更笑って済ませるなんて無理だよ。



どう対応したらいいか、わからない。

亜蓮も顔をあげてくれないから、本当の表情を読み取れない。



「行かなきゃいけないところがあるの。
……話の続きは、次会った時にするから」


ごめんね。

今のあたしには、亜蓮の気持ちに応えてあげられるほど余裕がないの。


話を終わらせるように言い捨てて、逃げるように部屋を出る。

毎回、勝手に飛び出して行ってごめん。



ひょっとしたら、感情に振り回されているのは亜蓮のほうなのかもしれない。

あたしのワガママに、付き合ってくれてありがとう。