私は今雨のせいでびしょ濡れになってしまった窓をただひたすら見つめていた。
最近梅雨に雨が長々と続いていたのである。
この少女の名前は雛田愛普通に高校生活を送っている1年生の少女だった。
この少女はただひたすらに窓を見つめていた。
何も意味がないことぐらいこの少女も知っている。
愛は勉強机の電気だけつけ数学のノートと芯を少し出したシャーペンと消しゴムを
机の上にポンとおいたままくらい部屋でただ雨を見つめていた。
笑いもせず泣きもせず…
彼女の頭の中には、
『どうして笑わないんだろう。』そう思っていたのだ。
そんな時、

プルルルルルルルー…。プルルルルルルルー…。
白い電話機がなった。
愛は重い体をよいしょと立たせて電話機まで歩いた。

がちゃ…。

『もしもし。雛田愛です。』
愛は笑った声でもなく泣いた声でもなくただ名前を言った。
『あっ…もしもし愛ちゃん?私おばあちゃんよ!』
それは母の里のお母さんつまり私の祖母であった。
『あー。おばあちゃん?どうしたの?』
『うん。………明日は是非福岡に帰ってきてほしいの。』
重い口がゆっくりと開いた。
『いやだ。帰らない。』
だって明日は…。
愛の急に苦しくなった。
だって明日は…
『どうしてなの?明日はお父さんたちの…』
『いやなの!!』

がちゃ!!

私は祖母の声を途中まで聞くと電話をばっさりと切った。
そしてあまりに興奮したためコードごと抜いてしまった。


ゴロゴロゴロゴロ。
雷がかすかに近づいてくるのが分かった。

愛はどうしても福岡に帰りたくなかったのだ。
だって明日は…だって明日は…だって明日は…
そう。
明日6月28日は愛にとって最大の最悪な日であり、
最愛の人を亡くした日でもあったからだ。