呆れるほどに愛してたんだよ。




「バカみたい」
君の口唇がそう言葉を紡ぎ、その矛先は僕に向いていることに気づき、僕は歪な笑みを浮かべる。


「本当、バカね」
そう言われて、とことん侮辱されても僕は喜びを感じていた。

マゾヒストな訳ではないけど、そう君に言われることがとてつもなく嬉しかったんだ。



僕はとんだバカ野郎だからさ。
今世紀最大の過ちを犯してしまった。


「君を愛してしまったんですよ」

ああ、本当心底バカだ。


愚民が神聖な女神を愛すなんて最高に甘美な禁忌。

いっそこのままこの汚らわしい身体ごとあなたに捧げたくなる。


旧約聖書のアダムは何を考え禁断の果実を食べたのだろうか。




「泣けてくるんじゃないの?」
頬に流れ落ちた透明の雫は僕ばかりではなく女神までもを濡らし、汚してゆく。

「バカみたい」

扉の鍵を手渡せば、あとはもう堕ちていく。



歪んだ愛情、破綻した物語。



今すぐ飛び立って、そのまま闇へ行ってみたい。


「狂ってる」

何もかも。




愚かな民が苦悶する姿を尻目に女神様は流れる旋律と共に豊かなステップを踏む。



まるでソドムの市。

草葉の陰でサディスト公爵がさぞ笑っているだろう。



スキャンダラスで甘い罠。

まんまと嵌った僕はいつまでこの無限に続く苦しみを味わうのか。



乾いた銃声と澄んだ歌声。

耳に届くころにはすでに息絶えて。




















ああ、君は本当に綺麗な女神だ。