『お願いします!和菜がこんなにやりたがってるの初めてじゃん。ねぇ、おばちゃん』


空は泣いていた。

泣いている顔すらも美しい空の顔に、あたしは見とれていた。


そんなあたしは、ただわがままを押し通そうとする、傍観者だったけど。


そのあとも、空はお母さんを説得し続け、空のおばちゃんまでもが、お母さんを説得してくれて、折れたのはお母さんの方だった。


『無理はしないこと。和菜は、他の人とは違うんやけん。それだけは、しっかりと頭に残しておくんよ』


そう言って、入部の紙にサインしてくれた。


本当は、優しいお母さん。

心は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


それでも、あたしはそのおかげで吹奏楽を続けている。


空を犠牲にして。