「もう時間ないから帰る、叶も……帰ったら?」
これ以上叶といたら自分の甘えたい弱音を吐きたいという欲が沸き上がってくる。
だから早く……帰って?
私はこれから自分の今日の仕事をクリアしないといけない。
「……わかった」
私と叶の関係は私が女王たちに機嫌を取るように叶の首輪を持ってるだけ。
無理に嫌われたらいけない。女王たちのためにも私は無茶に突き放せない。
「そういうことで、じゃあ」
もう少しで泣いてしまいそうだった。
甘えてしまいそうだった……。
私は一瞬の緩みを禁じられている。
そんな私の行動が女王たちはお気に召さないときもある。
実験体にされるのに物がいいと奪われる。
叶……女王たちを嫌わないでね最近できた価値のある存在みたいだから。
家に帰っても休む暇なんてない。
今日は1回で済むから楽だったけど…。
こんな日は必ず…女王たちから電話がかかってくる…。
いい加減休ませてよ。
「ねぇその人どうだった?」
「普通だったよ?」
「ご苦労さまぁ処女失くした芽瑠には容易い仕事だったでしょぉ?」
処女を奪ったのは……女王たち。
友達の処女を無理やりにでも尽きだす極悪人。
芽瑠side
いつだっけ……処女奪われた日。
高校1年のときだっけ…。
私の友達が女王ってわかって、頼みごとが激しくなる一方で。
それをなんとなくこなしてきた私。
まだあのときは痛い思いはしなかったから…楽だと思ってた。
「ねぇねぇ私この人のこと断っちゃったぁ」
胸騒ぎがした…。
「芽瑠ぅ代わりにお願いしてもいい?」
「それは無理だって私も初めてだし」
こればかりはなんとしても、断ろうと思った。
心の準備も余裕もくれないのか。
初めてはそういう風に終わってしまうの?
「はぁ?芽瑠の処女なんて安いもんでしょ」
「そうそう、安いってー金になっても1円ぐらい」
私の処女は…1円?
好きな人と……できないの?
初めては……結婚する人とやりなさいって誰かに教わったことがある。
私……これだけは絶対にイヤ。
「本当にイヤだって、重いし」
「えぇ…?聞こえないんだけどぉ」
「どぉ…」
「私もー」
もういい………や。私はもう今日は死ぬ気で仕事に励もう。
「はいこれ、避妊道具ね」
「ありがと」
「もしー良かったら報告よろしくう」
本気で……友達にそんなことさせるんだ。
今日だけ死ねないかな…だってだって…。
痛いって……噂ですごく聞いてるし。
カウトダウンは1秒になったとき
下半身に激痛が走った……。
「痛い…痛っ……う」
「アンタ代わりだろ?かわいそうに」
なら………その行為やめてよ。
愛のない関係はいらない。初めては愛のある抱き方をしてほしかった。
そんな願いも報われない私はマリア様に嫌われている。
優しく包んでくれるような、抱き方を夢みて。
女の子は生まれてくる子もいるんじゃないの…?
それを粉々にされた私は…何?
処女を失くした次の日、詫びれもなく平然と聞いてくる女王たち。
「どうだった?」
「痛かったとしか覚えてない」
「はぁ?もう1回ヤッてきて?」
「別に上手くなかったと思う」
「ふーんじゃあ芽瑠にその人あげるー」
えっ……毎日相手しろってこと?
「痛かったって芽瑠ー処女じゃなかったんでしょー?知ってるよぉ」
「えっ?本当に痛かったって」
じゃあ体験してみれば?本気で死ぬよ?
心の準備の余裕もくれないで友達にこんなことさせるなんて、
……極上女王たちの私は玩具だとこのとき知った。
「芽瑠ー聞いてる?」
ぼうっとしてて、女王たちの話をほとんど聞いてなかった。
「聞いてるよ、何?」
「叶くん連れてきてって言ってんの」
「わかった待っててよ」
だからこんな頼みは楽に聞ける。
いつも思うんだけど、処女を奪われた痛みの方が辛かったなって思えば…
今のパシリなんて容易く思える。
叶…音無 叶……教室の中に居て女に絡まれてる。
辛そう……。顔ひきつってるしね。
「叶…ちょっと来て?」
一気に女たちが私を見る…。
「あっ……芽瑠ちゃんだ」
「本当だ…可愛い」
「私たち邪魔かぁ」
そんなどうでもいいから、さっさと叶を寄こしてよ。
叶……私は女王たちの玩具だから極悪人の一員だよ。
「何?またあの子たちに頼まれたの?」
「へ?」
「だから頼まれたの?」
「あの子たちが呼んでほしいって頼まれた」