「なんで来たの?何か飲む?」
「……」
何か疲れてんのかな…また男とヤったとか?
そんな考えをしただけど体中が押さえられなくなってしまう。
芽瑠もう少し待って…
必ず必ず芽瑠の闇の真相にたどり着いて見せるから。
「芽瑠……?」
俺の横を素通りして棗に話しかけてる。棗は俺の視線を感じ取り顔を青くして話を中断させようとするが無理な様子。
何なんだよ…。
「芽瑠さんあの―…お聞きしたいことが」
「何?」
「あの―…コイツ知ってます……?知ってますよね?」
棗何考えてる?
話しかけんなよ。
ケータイを取りだしその画面を見せた棗。
「何で……」
「俺の友達なんです」
「またヤれっていうの?」
「いえ…知っているかどうか」
「知ってるよ。たしか昨日ヤった男」
「あともう1つ聞きたいことが…」
「何?」
「最近″マリア″を悪く言う奴が増えてます名前知りません?」
マリアを悪く言う奴ら?
マリア様と呼ばれていた星野マリアを?それはありえない。悪くいったその人はスターマリアから追放かもしれない。
「……」
「知ってるんですか?教えてください」
「マリアを悪く言うならそれは私の母親じゃないこと。それだけはわかってほしい」
「やっぱり芽瑠の母さんは星野マリアさんだったんだね…」
「うん…」
切なげに微笑み「星野マリアは尊敬なる私の母親よ」と言った。
よく見たら星野マリアの娘、芽瑠の性格は母親似だとこのとき思った。
他人のために生きて生涯を終わらせるのだろうか。
そう思った。
「で、マリア様を悪くいう奴…というより今は何でしたっけ」
「知らない方がいいよ」
「なんでですか?」
「関係ないからじゃん?」
冷たい視線が向けられた棗は次の言葉が出なかった。
俺はそれを見ていて「芽瑠、お願い言って?」と頼んでも睨むだけ。
でも負けじと芽瑠を見つめた
「……ここスターマリアの一番の悪女はこの私。星野芽瑠」
何かのセリフでもないのに胸の中がざわめいた。
瑠side
私の見る目がさっきとは違う、目を見開いて言葉も出ない叶。
「悪女…意味わかる?わからないだろうけど」
「芽瑠さんもっとわかるように…」
「夜街を歩く貴方たち二人ならわかるでしょ。私がなんと呼ばれているか」
「芽瑠さん…貴方はその名前で呼ばれて気分はどうですか?」
聞きにくいことなのか歯切れが悪い棗。
イヤに決まってる。母の名誉を傷つけてまで何をそこまで女王たちに従ってきたのか。
毎日皮肉を浴びさせられどこの裏道を通っても私はスポットライトをあてられているのかすぐに見つかる。
「どうなんですか…?」
どうなんですか…か。棗にわかるわけない。
なにしろ私はこの9年間母の墓には行ったこともないしマリア信教がなんとかやってくれるだろうと安易に考えてる。
「芽瑠…言っていい?辛いよねその名前で呼ばれて」
「……」
「何と呼ばれているかわからないけど…」
「……」
「芽瑠は悪女じゃないよ」
何言ってるの?
「本当に悪女なら…友達のために何かしないよ」
「は?」
「俺は何度も言ったよ?すべて見てるって」
「で…?」
「でもさ俺は芽瑠が助けを求めないと動けない」
じゃあ求めたら助けてくれる?
私には私には…そんな「助けて」とか人生で相手に使ったことがない。
だって助けてはくれないから。
「チョークの粉、自分で事故とか言ったけど。気づいてるよ俺はちゃんと芽瑠を見てるよ。あれは美佐がやったこと知ってるよ?」
私も言えなかった。本当のことだしもう美佐をかばっても叶は嘘を見抜くと思ったから。
「必ず助ける」
「……」
「俺は芽瑠を裏切らない」
「頑張って?期待はしていないから」
さあて。私の仕事
叶のクラブの反対にあるホテル。
女王たちのために金稼ぎ。
イヤなほどこのホテルのすべてを知り尽くしてる。
行ったことのない部屋番号はない。
どこにその番号があるかもわかってしまうほど、このホテルに来てる。
「101号室でいい」
「かしこまりました」
嫌みなほど綺麗なタブルベット。え―ともう来てるのか。
「悪魔マリアちゃん可愛いね~金稼ぎ?」
「はい、そうです」
「でも金欠でさ、タダでお願い」
そう言って押し倒され背中がベットついた。
タダ?バカ言わないで。
タダでこんな行為したくない。
抵抗しても男の力には勝てなくて、でもそれだけじゃなく私自信が弱いから。
「抵抗可愛い―」
「イヤ…ゃあッ!」
「繋がってるから…」
叶………
気づいてるんじゃないの?あれはウソ?
「イヤ……「何やってんだよ?」
そんな…まさか。
「イヤがってんのわかんねーのか?」
男を私から引き離して拳を殴り付ける叶。
「ヒッ…」とうめき声をあげる男。構わずに殴り続ける叶。
こんな叶初めてみた…。
「帰れ」
低い声で叶は言うと男は一目散に逃げてしまった。
――…この状況どうすれば。
「大丈夫?」
「……」
「好き好んでヤッてないんだね」
「ヤってるよ叶邪魔しないでよ……」
「ウソ。さっき叫び声聞こえた」
そんなこと、どうだっていい。なんで助けられた?
「あっ顔に出てる。助けられたのは跡をつけさせてもらってた…」
「ストーカー…」
「別にいいよ。助けられたし…ね?」
そのまま私を抱き締めて首筋に叶の息がかかる。
「お金ならあげるよ?」
「叶からいらない」
「こんな行為していいと思ってるの?」
そう言い私の首筋に舌を伝わせる叶。
「ゃ……ん」
「やめ…て叶。叶は美佐の彼氏……でしょ?」
「黙れよ、俺は付き合いたくなかった…」
裸な私をいいことに胸を触ってきた叶。
やめ…て、でも叶は優しい。
「や……ぅあ…ん」
「ごめんお仕置きしすぎた」
「される覚えはない」
「そうだね…ごめん」
離れる叶は体温が惜しい。そのまま抱き締めたままでいいのに…。
「助けまだ求めない?」
「絶対イヤ…できないよ」
叶に助けを求めたくても、私の情報は何故か美佐に伝わってしまうから無理だよ…。
叶……どこまで私のピンチに運よく現れるの?