もう我慢できなかった俺は屋上に来た。




――芽瑠?




「芽瑠っ」

「何?何しに来たのセフレくん」




そんなことをいう芽瑠は冷たく笑った。




「日直じゃなかった?」

「さぼった」

「そっか」




芽瑠と話せてる。この前までは無理だったけど。




でもセフレって…二度とやりたくない。




「で?何の用?」

「気分転換しにきただけ」

「あっそ早く美佐のところ行ってあげて」




そんなこというくせに、それなのに切なく俺を見るんだ…。












「俺言わなかった気分転換って」




寝転がると芽瑠が胸板に足を乗せてきた。




何?




「ウザい…迷惑美佐と宜しくやってよね」

「平和になるから?」




俺の唐突な質問は芽瑠の目を見開かせた。




「聞いてたワケ?」

「聞こえただけ」

「そうだね平和になる」




俺の存在が邪魔だから?




芽瑠にとって俺と美佐が着きあうことで平和になる?




「平和になるのはなんで…?」



俺がしつこいのか胸痛を踏むのにグッと力が入ったのがわかった。




「叶にはわからないよ」

「なんで俺に話してくれないの?」




そう言うと芽瑠は黙って踏みつけるのをやめた。




「叶はみんなにちやほやされる」

「うん…」

「そんな叶に言ったって無意味だから」




頼りない俺。




俺の存在自体が芽瑠にはウザいのかもしれない。




最悪だ…。









「芽瑠も人気だよ」

「どこがお世辞?」




芽瑠は容姿完璧で男によく噂を聞く。




それを聞くたび俺は壁を殴りそうになるけど。




「本当だよ」

「あっそ」




芽瑠は何もわかってない。




「そろそろ戻ってくれない?」

「わかった」



芽瑠side




「平和になるから?」




叶が屋上から追い出したあとその言葉を思い出していた。




平和になる?




そんなわけないよ。




日直さぼってたっけ行かなきゃね。




教室に戻ると女王が機嫌悪い顔で私を睨んでお出迎え。




何ごと?




また叶なんか余計なことしたの





「叶くんペンダントくれなかった―」




ペンダント?


「ペンダント? 」

「そう叶くんがくれなかったの」




美佐は飲んでるパックを潰している。




「あのペンダントほしい~だって彼女候補なのにぃ」




日直だから私は黒板を消していた…。




美佐は私が気に食わないらしく…落ちているチョークの粉を私の頭に振りかけた。




「何するの?」

「ペンダント芽瑠のイメージぽいし…ウザいんだよね」

「美佐かわいそうーなんとかしてあげなよぉ」



なんでもこうも私ばっかりに罪が降りかかるの?




叶のせい…。




頭についてるチョークの粉を払い…美佐を睨んだ。




「なんで睨むのよぉ」




クラス中は何事かと、もう私たちはみんなの注目の的になっていた。




「早く約束守ってよね芽瑠――?」

「……」




無理じゃない?




叶から美佐の話なんか聞いたことないし。




「ほら早くペンダント―」



はぁ――…




クラス中に私を助けてくれる人なんかいなかった。




助けるどころか笑う奴までいた。




誰も女王たちには逆らえない…。




だから助ける奴なんか…




「何してんの?」




絶望で死にそうになったとき叶が来ていた。





なんで?




「えっ…」

「何してんだよって聞いてんだよ」



これはマズイ…。




美佐が悪者になって叶に批判な印象になってしまう。




「何してんのって叶が何してんの?この頭についてるのはチョークの粉を触った手で髪を触ったから」

「嘘つくなよッ」




ガシと手首を掴まれて「ほら何もついてない」と言った。




叶…鋭い。




「これ誰がやったの?」

「やめてよ叶!事故なんだって」

「芽瑠……我慢するなよ」

「もうほっといて叶は教室戻って」




叶をグイグイと押した。




うわっ…




いつの間にか叶に髪についてる粉を払われていた。