雪の中。

「どうして……」

彼女が、そこにいた。

「どうしてずっと待っているんですか!」

「僕が先に帰って……すれ違いになったら嫌じゃないか」

彼女は嗚咽を漏らしているように見えた。

「どれだけ待っていても私は来ないんですよ!!」

「来なくてもいい。……ここにいるだけで、想いが残せるんだ」

「……届かない想いに意味なんてないんです!!」

彼女が顔をうつむかせる。

「意味なんて……ないんです……!」

だったらこれは僕の自己満足かもしれない。

ここにいることが……僕にとっての幸せだから。

「ユカリさん。僕は……」



もう、届かない想い。





「僕は、幸せだったよ」





――一閃。

視界を何かがさえぎった。

思うと、左頬が熱くなっている。

「目を、覚ましてください……!」