「そのー、ユカリさーん?」
「へ?」
彼女は意識を取り戻したかのようにばっと体を離す。
そして、腰を折る。
「すいません!ショウタさん!」
「あ、いやこっちこそ」
この様を他人から見たら僕らはどう写っているんだろうか。
二人は前途多難だ。
それでも、僕はまたはぐれそうにならないために。
「ユカリさん、手」
「……はい」
君の手を、握っておくよ。
やっとのことで、中に入る事ができた。
ゲートから離れていくにつれ、さすがに人がまばらになる。
二人は少し歩いて、行き先が決まってない事に気がついて立ち止まる。
さて、どこに行こうか。
「どうしよっか」
ユカリさんの顔を見た。
……赤くなっている。
どうしてだろう、と思ったところで、自分の右手に熱がこもっている事に気が付く。
……手、握ったままだった。
「あ、ごめん。嫌だった?」
僕は反射的に手を離そうとするが、離れない。
ユカリさんが僕の手を握ったままでいた。
「……もう少しこのままがいいです」
二人とも手袋をはめず、素手で触れ合っている。
そう考えると、心臓の鼓動が速くなる。
早鐘のようなそれが、手から相手に伝わってしまわないだろうか。
僕は、いや僕達はそのことが心配だった。