「話はこれで終わりかな?」
「ええ。帰っていいわよ……」
これ以上長くなると、僕は振替休日を要求することが出来る。
なんとも不誠実な生徒会役員だが、そういう取り決めなのだから守らなくちゃいけない。
「それじゃあ、お疲れ様でしたー!」
「ええ。お疲れ様」
「お疲れ」
僕はカバンを背負い、生徒会室を飛び出した。
僕は少し早歩きで、情報処理室に向かう。
パソコン部の活動場所はそこだ。
廊下を曲がり、情報処理室が見えた。
――その前に、一人の女生徒が立っているのも。
誰だろうか。
後姿からわかる、長い髪をリボンで結んでいる。
歩みを止めず、一歩一歩近づく。
彼我の距離が、ほんの数歩になったところで、彼女は驚いたようにこちらへ振り向いた。
そして、僕は気付いた。
彼女の右目が眼帯で覆われていることに。
――雪城ユカリ。
さっき生徒会室で聞いた名前。
自殺未遂の少女。
――なぜ彼女は、自ら命を絶とうとしたのだろうか。
自分の中で、驚愕と不安とが入り混じった感情が湧き出したその一瞬が、とても長く感じられる。
何か言わないと……しかし、この場で適切な言葉がすぐに浮かばず、焦る。
――だけど僕は非常事態になれているのかもしれないと思った。
「どうしたの?」
そんな軽い言葉が、口をついて出てきたから。