――― コッチダヨ。

「はい?」
誰かに呼ばれた気がした。あたりを見渡すが、誰もいない。


――― コッチダッテ。

「何?」

手前の小さな裏路地から聞こえてきた。

でも、そこは錆びついた階段がすぐにある。

――― ハヤク。

時雨はつばを飲み込み、
目をつぶって裏路地へと突っ込んだ。