耳は、何も聞こえない。

ただ、花音との思い出が

蘇ってくるだけ。

「そうだ。病院…」

一瞬、冷静になる。

まだ、生きている。

可能性は、ある。

「病院…行ってくるね。バイバイ」

呆然と立ち尽くす友達に、そっと手を振る。

何も言わない友達を背に、私は病院へ走り出した。