私のかわいい後輩君


「わぁー。おいしそう!」


「未奈、桃ちゃん手を洗ってきな?」


「「はーい」」


そういうと二人は仲良く手洗い場に向かった。

今日のメニューは、結局グラタンになった。


このメニューが一番無難だろうと考えたからだ。




「いただきます。」




たわいのない話をし、我が家は久しぶりににぎやかな食卓になった。


「電話貸してくれてありがとうございました。」


「いえいえ。で、誰が迎えに来るの?」


「お兄ちゃんって言ってました。」


お兄ちゃんね~。
できれば、お母さんくらいがよかった。



《ピンポーン》


「あ!桃ちゃんのお兄ちゃんじゃない?」


「未奈みてくる~」


元気よく走って玄関に向かった未奈。

それに続くように桃ちゃん、あたしの順番で前に進んでいく。


「すみません。俺の妹がお世話になったようで…って…春瀬先輩!!」


「あぁー。梅崎君じゃない。もしかして、君の妹ちゃん?」


「はい。でも、びっくりしたなぁー。春瀬先輩の家だったんですね。」



あたしもびっくりです。
まさか、また君に会うなんて…ね。


偶然なのか必然なのかわからない。


体育祭に向けて着々と練習をしているあたし達。


創作ダンスに綱引き。
借り物競走に障害物競走。

そして…
なにより、力をいれている対抗リレー。


今年は、3年生に知ってる先輩がいるんだし。

高校生活最後の記念に優勝を紗羅先輩に捧げてあげたい。


真面目に練習に来て、バトン渡しの練習をして。


男子の先輩に貰い、梅崎君に渡す。


みんなには、さほど大変な内容ではないかもしれない。



が、
男嫌いのあたしにとっては、すごくすごく過酷な練習となってしまった。



「体育祭まで、残り5日悔いが残らないように頑張りましょ。」

という、生徒会長の有り難くもない言葉が終わり
各自練習の時間。


「春瀬先輩。練習しましょうー。」


笑顔で近づく後輩(涼介)をよそに。


「わかったから、近づかないで…」


失礼過ぎるほど叫びだす先輩(ちひろ)。



「先輩?」


「あ…気分悪くしてごめんね。」


「い…いえいえ。」


梅崎君本当にごめん。
君は、悪くないんだよ。別に君のこと嫌いとか…じゃ…ない…んだよね…。



でも…







でも…






体が拒否反応をおこすんだよ。


「また?これで何回目よ!いい加減なれなさい。」


今は、お昼休み。


実咲に練習の時の話をしたら案の定、怒られてる始末。

「だって、男の子って無理なんだよー。」


「わかってるけど。それじゃ、イケメン君が可哀相でしょ?」


「う゛。確かに…。」


梅崎君には、確かに失礼なことしたなー。



「でも、あのイケメン君は、ちひろが嫌うような男じゃないよ?」


「わかってる。あの子はすごく優しい子なのはわかってる…でも…」



「でも…?」



あたしの男嫌いなのは治らない。


だから、梅崎君がすごく優しい子だとしても…






「無理なものは無理なのよー。」





「これじゃー。二人が恋人になるのは、今のところ難しいわね~。」


「は?」


「ううん。こっちの話。」


「先輩~」


「ん?」




大きく手をブンブンとさせながら、やって来た後輩のかなこ。


「かなこぉ~。もぅ。本当にかわいい!」


かわいい子っていいよなぁー。



かなこ見てるとなんかしんないけど、心の底から癒されるよなぁ。

まぁ。未奈も癒されるけど、今いないしなぁ~。



かわいい子は、この世には沢山いるのに…

なんでなんで男がいるんだよー。


あぁー。


これなら、共学じゃなく女子高にいけばよかった。