「えーと。あたしの名前は…「春瀬ちひろ…さんですよね。」
あたしの声を遮るように、あたしの名前を言ってきた華菜ちゃん。
「え?なんで、知ってんの?」
「だって、入学してからうちらの学年で有名ですよ!すごく、美少女な先輩が居るって…。」
美少女?
あたしが…?
「まっさかー。んな訳あるわけないじゃん。」
美少女って言うのは、実咲とかのこというんじゃ…。
華菜ちゃんの学年、視力大丈夫かなぁ?
「先輩!!」
「ちーちゃん?」
「あたしこれからちゃんと部活行きます。」
「は?」
ちゃんと、部活に行って…
華菜ちゃんと会う為に…。
「おおー。春瀬、お前ちゃんと部活来てくれんだなー。顧問としてうれしいよ」
うげっ。
出た顧問。
「ちひろ先輩って部活来ない人なんですか?」
「ちひろは、実力あるんだけど……ね」
華菜ちゃん本当かわいい。
まるで、妹のようだ。
こうして、新たにかわいい後輩が入って来た部活は、活気が増えたのであった。
まさか、後にかなこ(華菜ちゃん)からライバル視されるなんて思ってもみなかった…
最近、部活の勧誘がしつこい。
野球部にサッカー部、バスケにテニス、陸上部にバレー部。
どれも、運動部の部活勧誘。
確かに俺は、中学の頃サッカーで、よく新聞とかの記事に書かれたりした。
別に、運動は嫌いじゃない。
どのスポーツも、大概出来るし、よく部活の助っ人とかしてた。
でも、高校では部活に入る気は全然ない。
だから、内心困っている。
悠輝は、中学から続けてるバスケにさっさと入ったし。
同じクラスの中川は、陸上部に入ったって、悠輝が言ってたし…。
周りが、部活に入ってると俺も入らないといけないのかと思いだす。
「はぁー」
「どうした。梅!元気ないじゃん。」
「中川か…。」
こいつもいつも元気そうだな。
「かなこー。」
「ちひろ先輩!わぁー。遊びに来てくれたんですね」
ちひろ先輩?
まさか…。
「うん。今日は、実咲も一緒だけど…」
春瀬先輩じゃないか。
てか、どうして中川が春瀬先輩と知り合いなんだ?
「かなこちゃん。かわいいね。ちひろが叫んだ訳だ。」
「そんなことないですよ。実咲先輩の方がかわいいらしいです。」
「まじ!?ありがとう♪」
「かなこ。あんまり、実咲を褒めたらダメ。」
「なんでですか??」
「え。調子に乗るから」
「そうそう……ってこら。あぁーー。」
そういきなり、俺の方をみて叫び出したこの間の先輩。
そのおかげで、春瀬先輩と目があってしまった。
「イケメン君じゃない。久しぶり♪」
そういいながら、俺の前に現れた。
「お久しぶりで…す。」
「相変わらず、イケメン君はカッコイイね!」
相変わらずってどういうことですか…ね。
「ね。そう思わない?ちひろ。」
「ん!?別に…あたし男興味ない…。」
きょ…興味ない…。
またまた、振られたのか俺…。
ってまて、だから告白してない。
興味ないって、誰か他に好きな人がいるのだろうか…。
「ま、ちひろが男に興味ないのは、相変わらずか…。」
「え。ちひろ先輩っていわゆる男嫌いなんですか?」
男嫌い?
春瀬先輩が…?
「そうそう、ちひろは世間体で言えば男嫌い。」
「なんでですか?」
「昔色々あって、男嫌いになった。」
昔色々あって、男嫌いに?
春瀬先輩が?
ってことは、今告白とかしてもぜってー振られるじゃねぇーかよ。
「はぁー。」
「どしたの?イケメン君。」
「いや、こっちの事情です。」
「あーそうだ。イケメン君メアド交換しよ♪」
この先輩、春瀬先輩と随分仲良しだから、メアド交換して…
「いいですよ。」
断る理由もない。
このメアド交換がいい方向に進めば、俺の未来は明るい!!
メアド交換したおかげで、ちひろと涼介の仲が深まるのは、まだまだ先の話である。
初夏に近づくにつれて、
桜坂高校では
1学期最大の
イベントである
体育祭が始まります。
「個人種目を決めたいと思います。」
学級委員が話だす。
それを聞くと、体育祭シーズンだなってあらためて考えさせられる。
「ちひろ何でんの?」
「適当ー。」
だいたい、出場種目は決まってるからな。
「対抗リレーは、春瀬さんと伊東君で決定です。」
ほら…ね。
別にリレーが嫌いじゃないけど、あたしだってリレー以外の種目に出てみたい。