「ちひろ……」
「ごめん。実咲、ちょっと気分悪いから保健室に行くね?」
「あ、うん。」
実咲とこれ以上いると、涙が出てきそうだから。
しばらく、一人になりたい。
ドンッ。
「ごめんなさい。よそ見してて……」
「ううん。大丈夫、君こそ怪我ってちひろ!
どうした、実咲と一緒だった………ちょっえ?
え?ちひろ?」
太陽の顔をみた途端、涙が止まらなくなった。
ごめんね。太陽……。
「ど?落ち着いた?」
今あたしたちは、学校の屋上に来ている。
「うん、だいぶ。
ごめんね。授業サボらせたりして。」
「いや、大丈夫。
最初から、サボるつもり満々だったわけだし。」
「あはは。」
「何かあったんだな?
話せる範囲で言いから話してみ?
意外と気分が楽になるから。」
「だいよぅー。」
そして、あたしは今の心の心境や今までの話を話した。
男嫌いだったこと。
先輩からの裏切り。
それを、梅崎くんが解決してくれたことなどを包み隠さずに話した。
「あたしね……
中学の時に2つ上の先輩に片想いしてて、ある時思いきって告白したの。
フラれるって思ってたけど、
結果は意外にも『OK』だったの。
多分、それぐらいからかな?
先輩のことを好きだった子たちから、嫌がらせとかされてさ。
辛かったけど、先輩と一緒ならどんな嫌がらせも耐えられると思ってし、先輩も守るって言ってくれた。
なのに、先輩はあたしを裏切って、あたしに嫌がらせしてた子と付き合いだしたの。」
「……。」
「それで、あたしは自分は自分で守っていかないといけないし、男なんて信じられない。
だから、あたしは男嫌いと言う大きな壁を造ったの。」
「でも、そんなあたしの前に現れたのが、梅崎くんだったの。男嫌いだろうと、お構いなしに接してくれたし、男嫌いを克服させようとした。」
いつでも優しくて、だから好きになってたんだと思う。
「それが、太陽と出会うまでに起きたこと。」
全てを話し終わったと同時に
太陽が黙ってしまった。
「太陽……?」
「辛かったな?よく頑張った。
お前強いよ。」
「…………。」
「ちひろに何か事情があるってことは、見ててわかった。
でも……俺が想像していた以上だった。」
やっぱり、太陽にはなんでも
わかったんだね。
じゃあ、いつもどんな気持ちで接してくれてたんだろう。
「ごめんね……」
「だから、謝んのナシナシ。
しんみりすんのやっぱり苦手だわ。
ちひろに何があったとか、
今の俺には関係ない。
だって、お前いつも笑ってただろ?」
「太陽……。」
「俺は、今の春瀬ちひろと
友達なんだ。
昔の春瀬ちひろなんて、俺は知らない。
だから、お前はお前らしく自分の決めたように進んだらいい。」
あたしはあたしらしく
あたしの決めたように進む。
「そうだよ…ね。
あたし決めた!梅崎くんが誰を好きとしても告白してみせる。」
「おう、春瀬ちひろがんばれ!」
あたし、頑張るよ。
絶対に幸せになってやる。
男嫌いなんて……
ちゃんと克服してみせる。
「ありがとう、太陽。」
「おう!」
そして、あたしは梅崎くんに
気持ちを伝える為に走りだした。
梅崎がかなこに引っ張られながら連れてかれてるのを、
ちひろはただ黙って見ていた。
『別にいい……』
とか、言ってても顔までは
私を騙せない。
「ちひろ……」
「ごめん。実咲、ちょっと気分悪いから保健室に行くね?」
「あ、うん。」
何故か、いつものように
気の利いた言葉が出なかった。
これ以上、私は
ちひろの悲しい顔なんて見たくない。
保健室行く?
また、どうせ一人で泣くんだ。ちひろはいつもそうなんだって一人で抱え込んで……
「少しは………
私を頼りなさいよ!!」
柄にもなく、走ってちひろを追いかける。
ハァッハァ……
やっぱり、走るのきつい……。
「だいよぅー」
この声は、ちひろと太陽?
なんで太陽が……?
そして、私は二人のあとを追った。
気づかれないように。
そっと………。
しばらくすると、ちひろが話しだした。
その内容は、昔のことだった。ちひろが自分から話すなんて………。
『「だから、あたしは男嫌いと言う大きな壁を造ったの。」』
微かに聞こえた言葉。
男嫌い。
確かにちひろは、自分自身を守る為に、造った大きな壁。
その姿を見るたびに、私は泣きそうだった。
私は助けてあげられなかった。あの心からの笑顔を……
大好きだった、すごい楽しそうに笑うあの顔が。
見てる人まで、つられて笑顔になってしまうあの顔を。
「守ってあげたかった。
一番の親友の笑顔を……」
屋上の近くで二人の会話を聞きながら、私は思っていた。
もう一度みたい、あの笑顔を。
『「でも、そんなあたしの前に現れたのが、梅崎くんだったの。男嫌いだろうと、お構いなしに接してくれたし、男嫌いを克服させようとした。」』
わかってたんだ。
梅崎がちひろを救おうとしていたこと。
何故か自分のことのように嬉しかった。
あんたを信じてよかった。
本当に。
「聞いてたんだろ?」
嘘!?
ばれてたんだ。
太陽は、すごい奴かもね。
ちょっとは、見直した。