「でも、大丈夫だよ。
なんとかなるからさ……」
「なんとかなるってなんですか?」
え?
かなこ……?
「先輩は、いいですよね。
誰からも好かれて、みんなの人気者で……」
「え?あたしが人気者?!
いや………ないない。」
「あります。
先輩は誰がちゃんと近くにいて……。
そんな先輩なんかに…………あたしの気持ちなんてわかるはずもないですよ。」
パンッ。
「甘ったれたこと、いってんじゃない!
……あたしはかなこの良いところいっぱい知ってる。」
いつも、誰よりも早く来て練習して……
人一倍練習だってしてるの知ってる。
それなのに、自分のこと信じないとなんか……
悲しいじゃん。
かなこは、かなこで良いところあるのに……
それをちゃんと、認めてあげないと……
「かなこ、もっと自分に自信を持たなきゃ。
あたしには、なにがあったかなんて知らないけど……
かなこなら、乗り越えられる!!」
「先輩……。
すみません、あんなこと言ってしまって……。」
「ううん。全然、気にしてないから。」
少しだけ、かなこに笑顔が戻った気がする。
そういえば、あたしってかなこと梅崎くんの恋のお手伝いしてって言われてた。
でも、かなこに協力してもいいの?
もし、二人がくっついたとしたら……
素直に喜べる?
素直応援できる?
「先輩?」
「あ、うん。」
多分、今の気持ちをかなこに言った方が、いいはず。
「あのさ、かなこ……
こんなこと、言っていいのかわかんないけど……
あたしね、かなこと梅崎くんの恋のお手伝いは、やっぱりできない」
言った。
かなこから、嫌われても構わない。
だって、それ以上にあたしは梅崎くんのこと好きだから。
「どうしてですか?」
「どうしてって……
黙ってたけど、あたしも………梅崎くん好きだから。」
「………。」
二人の間に長い沈黙が続く。
「………知ってました。」
最初に沈黙を壊したのは、他の誰でもないかなこだった。
「え…?」
「私は、最初から先輩が梅のこと好きって気づいてました。」
気づいてた?……って、
待って!
あたしでさえ、最近梅崎くんのこと好きって気づいたのに………。
「だから、先輩に協力してもらうように頼んだんです。
結局……ずるいですよね。
他人の協力で得たものなんて、嬉しくないのに……。」
「かなこ……」
「だから、先輩。
私負けませんから!!
正々堂々と勝負しましょう。」
「勝負?」
「はい。どちらと付き合ったりしても恨みっこなし!
って言うので。」
「うん。わかった……。」
よかった。
かなこにいつもの笑顔が戻ったようだ。
正々堂々と勝負か……
そういうことなら、かなこが梅崎くんと付き合ったりしても、祝福できる気がする。
『いつも、いつも春瀬先輩ばかりで気分悪いよ。
なんで?
私の方が、梅の近くにいるのに。私の方が……』
昨日、そう言って中川は走ってどこかに行ってしまった。
だから、怒ってんのかと思ってたのに……
あいつ、普通に喋りかけて来やがった。
まじ、女ってわかんねぇー。
あいつ、俺にキレてたんじゃなかったっけ?
まさかの、俺の勘違いとか?
「意味わかんねぇー。」
「ん?……もしかして、俺?」
悠輝じゃないのに、悠輝は一人で何か考え込んでいる。
あいつのそういうところ、意外と嫌いじゃない。
「違うなら、違うって言えよ。」
「いや、見てんのが面白いから」
「いやいや、面白いとかじゃなくてさ~。
最近、俺の扱い悪くね?」
「いや!悪くねーよ?」
「て?!きっぱり言います?」
また、悠輝が一人でイジケだした。
確かに、最近の扱い悪いかもな……。
と言うより、春瀬先輩とあいつの関係が……。
「中川ー。」
「ん?教えてあげないよ?」
「いや、何にも言ってな……」
俺の発言を無視して、中川はにこにこ笑いながら、女子の会話してる輪の中に入っていった。
くっそー。
ケチケチしないで教えてくれてもいいじゃねーか!
「もう、誰にも頼まねーよ!」
そういうと、俺は教室を後にした。
華菜(かなこ)Side
「いや、あいつも大変だよな?
でも、いいのかよ。
中川って涼介のこと好きなんだろ?」
「え?佐久間、知ってたの?」
「いや、この間。
あれ、もろに告白ぽかったからさ……」
「あれね……」
「遠回しで、告白だろ?」
「ん。まーね。
なんか、梅にはわかんなかったみたい。」
頭は、良いのにな。
こういうところで、すごい鈍感なんだよね。