「ちひろ、久しぶりに来たんだから、タイム測る?」
タイムか……。
落ちてる気がする。
最近、測ってないし運動もしてないし……。
でも。
「うん、測るわ。」
ここで、測らないって言ったらもし、紗羅先輩なら……
『ふざけるな。つべこべ言わずに測ってくる。』
って言われるな。
「え?!マジで測んの?」
「え?いけないの?」
「いや、ちひろがタイム測るって言うとは思わなかったから……。」
む。
怒っちゃうぞ。
「そうそう、タイムって言えばさ、かなこ速いわよ。
あんた、抜かされるかもよ。」
え?
あたしが抜かされる?
……まさか。
「かなこ、1年の中では一番速いからね。」
もしかしたら、かなこにタイム抜かされるかも……。
それは、こ……困る。
「うん。いいタイム。
練習サボってたわりには、上出来。」
久しぶりに風を感じながら走った。
やっぱり、風を感じながら走ることが好きだ。
100мを走った後、かなこがこっちに向かってやって来た。
「先輩!やっぱり速いですね。憧れます!」
『憧れます』か……
なんか、照れるなぁー。
「ありがとう。でも、かなこ速いじゃん。」
「いや~そんなことないです。」
「またまた~。」
などと、たわいもない会話が続き……
すると、かなこがいきなりなにかを思い出したように手を叩いた。
「実は……。
わたし、ちひろ先輩に相談したいことあったんですよ。」
「相談?」
「…はい。今日、時間ありますか?」
いつになく、真剣に聞いてくるかなこ。
「あるけど。」
あたしは、快く後輩の相談にのることにした。
でも、何だろ相談って…?
「ちひろー。ボーッとしない!タイム測るよ。」
それから、タイムを何回か測ったけど、走ってはいても気になってしまう。
「今日の練習はこれで終わり。」
「「ありがとうございました。」」
やっと、部活が終わった。
それでも、かなこの相談が気になって気になって仕方ない。
「先輩、すみません。忙しい中呼び出したりして」
「全然。後輩が、相談したいことがあるなら聞いてあげるのが、先輩でしょ?んで、何?相談って」
「はい、実は…。私、好きな人がいるんです!」
かなこに好きな人ねぇー……
……って好きな人…?!
「まじで、かなこ!誰?相手。」
「誰にもいいませんか?」
「誰に言うのよ~」
かなこの好きな人とか想像つかない。
かわいいからなぁー。
色んな人に告白されるだろうからてっきり好きな人いないって思ってた。
なんか、いいな。
好きな人か…。
てか、あたしもちゃんと恋できるかな?
梅崎くんは、あの時ちゃんとできるって言ってくれたしなぁ。
本当、梅崎くんには感謝してるなぁー。
最初の頃は、すごく失礼なこととか言ったけど…
それでも梅崎くんは、優しくあたしを支えてくれた。
男嫌いが、なくなるっていうのはおかしいけど、
でも少なくとも梅崎くんに出会ったおかげで……。
………って
さっきから、
梅崎くんばっかりじゃん。
どうしたんだろ?
頭おかしくなったのかなぁ?
「あの……わたし、梅のことが……好きなんです。」
ふーん。
梅のことがねぇ~
梅のこと?
え?
もしかして……
梅崎くん?
「ごめん、ちょっと待って。
梅って梅崎くん?」
「あ……はい。」
やっぱり、梅崎くんだ。
へぇー
かなこが梅崎くんをねぇ~
意外とモテんだね。
ま、綺麗な顔立ちはしてるもんな。
実咲が話し掛けたくらいだし……
うんうん。
って感心してる場合じゃなくて。
かなこが……
かなこが………。
「……ぱい……先輩。」
あ、いかんいかん。
放心状態だった。
「うん。わかった。
んで、あたしは何したらいいの?」
「え。あの……あのですね……。」