「え…えっえぇーー。
涼介の待ち合わせの相手って有名な先輩たちかよーー。」
…あ、
こいつのこと忘れてた。
「あー、梅崎が言ってた。ふーん、なかなかの
イケメンねぇ~。
君、名前は?」
北川先輩の着眼点って……。
「さ…佐久間悠輝です。」
「そ、よろしく。」
「佐久間君よろしく。あたし、春瀬ちひろ。」
「よろしくお願いします。」
え?
春瀬先輩が悠輝と普通に喋っている?
よかった。
先輩の男嫌いも少し治ってるような感じがした。
「今日のラストに花火見れるらしいわよ。」
「花火?うわぁー。見たいなぁー。」
花火かぁ。
先輩と一緒に見れたら幸せなんだろうなぁ~。
「梅崎、浮かれないでちょっとこっちにきな。」
「?…実咲?……」
いきなり、北川先輩に隅の方に呼びだされた。
なにか、悪いことしただろうか……。
「いい?私と佐久間が、一緒にはぐれるから……。」
は?
北川先輩が悠輝と一緒にはぐれる?
ってことは……。
「俺と春瀬先輩、二人ってことですか?」
「そうよ。」
ま…まじかよ~
ムリムリムリムリ。
「しゃきっとしなさいよ。ちひろと付き合いたいんでしょ?」
「…はぁー。一応は……。」
「なら、がんばれ。以上!検討を祈る。」
検討を祈るって……
渋い言い方するんだなぁー。
「結果、報告ね。じゃあ」
報告って…
おいおいまじかよ。
北川先輩すごく楽しんでなかったか?
最近、実咲の様子がおかしい。
いつもかもしれないけど……。
だって、夏祭りに来てみるまで誰と一緒なのか知らなかったし……
梅崎くんとばかりコソコソと話してるし……。
何の話してんのかなぁ?
ちょっと、気になったりするんだよなぁー。
そして、胸の辺りがなんかモヤモヤする。
何故かわからないけど……。
「どうしたんッスか?春瀬先輩元気ないみたいですけど……」
そう言ってきた、今日知り合った梅崎くんの友達の佐久間君。
男嫌いのあたしだけど、この子は大丈夫な気がする。
多分、梅崎くんの友達の子だからかも知れない。
「ははっ。人混みに酔ったのかも…かな?」
「大丈夫ッスか?」
「うん。大丈夫だよ。」
そう言っていても、自分の心は偽れない。
だって、人混みに酔ってないんだから。
じゃあ、このモヤモヤする気持ちは何なんだろう。
「ちひろ。何から食べる?」
「……あ。う~ん、なんでもいいや。」
何故か、わからないけど……
実咲の顔が見れない。
「そ、んじゃ。
なんか適当に買ってくんわ。」
え?
実咲が……?
「待って下さい。女性を一人で行かすなんて出来ません。俺がついて行きます。」
「ふーん。じゃ、行くよ。」
スタスタと歩く、実咲とその後を黙ってついて行く佐久間君。
意外と、面白い光景。
「大丈夫か?」
「え?大丈夫でしょ。口が達者な実咲がいるし……」
「いや、危ないのは北川先輩です。悠輝、異常なくらいの女好きですから……」
「ははっ、大丈夫だよ……きっと…」
だよね?
佐久間君が女好きか……
人は見かけによらないって本当だわ。
ん?
そしたら、ちょっと前のあたしと逆の性格か……
「ありがとうね。」
「え?何がですか?」
「梅崎くんのおかげで、前に進めた。」
「そんなことないです。
俺、何も感謝される覚えないですよ。」
「そんなことないよ。」
梅崎君はあたしに希望をくれた。
心が闇一色だったあたしに光をくれた。
本当に感謝してる。
「先輩。どうですか?好きな人とか出来ましたか?」
好きな人か…
「ううん。全然……。あたしってモテないから~」
男嫌いのときは、ちょくちょく告白されたりしてた。
正直、苦痛だったな。
断るのも大変だった、勇気出した告白をあっさり断るから……。
「は?んなわけ、ないですよ。」
「そう?」
「……だって、俺……」
え?
…何?
どうしたの?
「…俺、先輩のこと……」
えっ?
なんでだろ?
胸がドキドキする……
「……先輩のこと…」
「…う…梅崎…くん?」
「だぁーあぁぁー。」
へ?
何なんなの?
「すみません。
なんでもありません。」
ははっ。
本当優しいな。
わざわざ、あたしを傷つけないように考えてくれたんだね。
「本当、ありがとう。」
聞こえるか
聞こえないかくらいの言葉であたしはそう呟いた。