「それより、どうよー。
『あたし、もう一回恋してみようかな…』って宣言してたわりには……。」
どうって……。
「以外と難しいよね。恋するってさ。」
長い間、恋とかしてないから、どんな気持ちが“恋する気持ち”とか忘れちゃったもんな。
「ふーん。ま、あんた出会い求めないもんね。」
出会い……ねぇ~。
「んじゃ~さ。今度の夏祭りでいい人でも探す?」
夏祭り?
いつだっけ……
「おい。楽しみにしてたわりには、日にち知らんのかよ。」
「エヘヘ。んで、いつ?」
「来週の日曜日くらいだっけかな?行くでしょ?」
来週か……。
8月になるのか……。
そういえば…
梅崎くんにあってないなぁー。
……てなに考えてんの?
なんで、ここで梅崎くんの名前がでてくんのよ!
「どした?顔赤いけど……ははーん♪なんか……」
「べっ別に何も考えてないよ。」
「あやしー。そんなことより、誰か誘う?」
「二人じゃなくて?」
「だって、女二人だけじゃ淋しい女の子じゃん。」
女二人ってことは……。
「まさか…」
「正解。そのまさかでーす。」
そうだろうとは、思ってたけどね。
「はぁー……んで、誰誘ったの?」
「ん―-……。ないしょ♪」
“♪”じゃなくてさぁー。
「…高校生初めての夏休みだからって浮かれないように!」
長ったらしい、担任の話も終わりいよいよ夏休み。
「涼介。どうだった?成績のほうは……」
「成績か?普通だったような…」
「見せろ。………はぁー。なんだよ。良すぎるだろ…俺、お前の頭脳欲しいわ」
はは…。
俺の頭脳ねぇー。
「それより、今年の夏祭り行くだろ?」
「おぉー。たぶんな…。あんまり、好きじゃないけどな。」
「お前、人混みとか嫌いだっけ?」
俺は、夏祭り自体は好きなんだけど、人混みが嫌いで毎年行くかどうか迷っている。
「行こうぜ。かわいい娘捜しにさぁー。」
かわいい娘ってお前は、どっかの親父かよ……。
「考えとくー。じゃあな、悠輝。」
「おう。またメールすんわ。」
メールか……。
そういえば、俺って…
北川先輩のアド知ってんのに、春瀬先輩のアド知らなくね?
「なにやってんだろ。」
チャンスは、いっぱいあったのに……。
あぁー。
ふと、思いだすこの言葉
『俺、お前の頭脳欲しいわ』。
悠輝、いくら頭がよくてもダメなんだ。
素直にものがいえる悠輝の方が頭いいのかもしれない。
仕方ない。
考えても惨めになるだけだ。
「帰るか。」
《ミーン…ミーン……ーン》
「あちぃ~。はぁ、なんで夏休みに学校に行かないといけないんだ……」
って、俺が夏休みの宿題学校に忘れたからか……。
「失礼しました。」
さすが、夏休みの学校。
誰一人いない…。
……。
てことは、春瀬先輩もいない。
次会えんのっていつだろ?
ってやばいだろ。
俺、先輩中毒かも……な。
《ガラガラッ…》
「あったあった。」
にしてもガラガラだなぁー。教室。
帰るか…。
それにしても、先輩ちゃんと恋してるかな。
でも、先輩が知らん人といい感じになってたら……。
たえらんねー
あ~あ、なんであん時、応援するとか言ったんだろう。
俺って馬鹿なんじゃ実は……。
「一人で暑苦しいわね。あんたも。」
「わぁ、ビックリさせないで下さいよ。」
「ビックリはこっち。夏休みなのにどうしていんのよ。あんた、頭はいいでしょ?」
頭は…って冷てー。
「俺は今日、忘れ物を取りに来たんですよ。北川先輩こそどうして…」
「プールの補講よ。別に泳げないわけじゃ、ないから…」
聞いてねぇーよ。そこまで……。
「……そうだ。あんた、今後の夏祭り行く?」
夏祭りって悠輝が言ってたヤツか……。
「行きますよ、一応…。」
「そ。……どう?行きたくない?ちひろと……」
ちひろとって……春瀬先輩と??
「え?…どっ…ど…」
突然舞い込んできた、ビックニュース。
いきなり過ぎて、動揺を隠せないでいる自分がいた。
「だから、私とちひろが夏祭り一緒に行くんだけど……私のプライド上、女だけは…ちょっと…ねぇ~」
プライド上ってどこかの女王ですか……。
「何よ!その顔は……。」
「べつになんでもないですよ……。」
「ふーん。で、どうすんの?あんたが一緒に行かないなら別さがすけど…」
う……ん。春瀬先輩と夏祭り……。でも、人混みが……。
「ちゃっちゃと決めなさいよ!」
散々考えた結果……。
決めた答えは……
春瀬先輩たちと行くことにした。
「ん、わかった。ちひろには私から言っておくから…ね。」
「ありがとうございます。」
やったぁー!!
言葉では、表現できないくらい浮かれてる俺。
浮かれてることで、すっかり忘れてしまっていた……
そして、一通のメールによってあいつのことを思い出すのである。