実咲と梅崎くんは、二人で何の話をしてたんだろう?
「先輩の…」
…………
………………ん?
「う…梅崎くん?」
いきなりどうしたんだろう。
「先輩の男嫌いは、俺が治して見せますから……」
え?
どうして……
知ってたの?
梅崎くんは、そう叫ぶと走って何処かに行ってしまった。
静まり返った保健室。
さっきまで、体育祭の後片付けをして、生徒たちがガヤガヤしていた校舎も静まり返っていた。
『「先輩の男嫌いは、
俺が治して見せます
から……」』
さっき言われた台詞が頭から離れない。
でも、嬉しかった。
暗闇から抜け出していけそうな気がする。
あたしの暗闇だけの心の中に明るい光が差し込んできた、体育祭だった。
春瀬先輩の過去を聞いて数週間がたった。
この数週間の間、俺はずっとひっかかっていることがある。
それは……
神崎先輩のことだ。
あの日、北川先輩が知らないところでなにがあったのか…?
真実を確かめたい。
春瀬先輩の男嫌いの真実を……。
「北川先輩いますか?」
「実咲~。なんか、イケメンがご面会だよ~」
俺は、思い立って昼休みに北川先輩のクラスに行った。
「すみません。こんなこと北川先輩に聞くのは、気が引けますが…」
「何?」
「北川先輩。か…神崎先輩って今どこにいるか知っていますか?」
「ま、そろそろ来るころかと思ってた。」
ここで、俺なんかが神崎先輩に会ったところでなにかがかわるってわけじゃない。
でも…。
それじゃ、いつまでもたっても春瀬先輩は、男に壁をつくってしまう…。
「桜丘大学……。桜丘大学にいるって…」
「ありがとうございます」
桜丘大学…
そこに…
春瀬先輩の男嫌いの原因になったやつがいる……。
待ってて下さい。
先輩の男嫌いは、俺が絶対に治しますから…。
そして、放課後桜丘大学に足を運んだ。
「すみません。」
「ん?」
「神崎さんっていますか?」
「神崎…って神崎大翔?」
「はい…」
「確かあいつ…ちょっと待ってて。呼び出すから…」
そう言うと、優しそうな大学生は、電話をかけだした。
10分たって、神崎って呼ばれている人がきた。
「いきなりすみません。俺、梅崎涼介っていいます。」
「よろしく。僕に用事ってなんだい?」
「単刀直入に聞きます。春瀬ちひろさんのことなんで振ったんですか?」
「春瀬…ちひろ…なんで、君がその名前知って……。」
なんだ?
春瀬先輩の名前出したとたん。
険しそうな顔になった。
やっぱり、あの日春瀬先輩となにかあったんだ…。
北川先輩の知らないなにかが……。
「振ったか…。確かにそうなるんだ。」
は?
「神崎先輩が、春瀬先輩を振ったって……。」
「うん…。」
「なにがあったんですか?」
「はぁー……。」
神崎先輩が
全部悪いって
そう思ってたけど、
以外とひどい人ではなかった。
そうなると、先輩たちは勘違いしてる。
それを伝えるべきなのか、俺は迷っていた。
うしっ!
どんなに考えたって意味ない。
わかんねぇーけど、
もし……
春瀬先輩が神崎先輩の話を聞いて、少しだけでも男嫌いが克服できたら…――。
もしかしたら、春瀬先輩の心からの笑顔が見れるかもしれない。
そう決心した俺は、北川先輩をメールで呼び出した。
あの日から、梅崎くんのあの言葉が頭から離れない。
すごく嬉しかった。
でも……
まさか、あたしが男嫌いだなんて知ってたなんて……。
どう思ったんだろうか…。
呆れちゃたよ……ね。
なんで、こんなこと考えてんだろ……?
今日のあたし頭おかしいや。
「…ち…ちひろ!」
「…ん?何?」
「放課後、屋上で話があるんだけど…って大丈夫?」
「あ…うん…大丈夫。……放課後ね…。」
授業があってるのに頭に入らない。
嫌いな教科だから……?
いや……違う。
いつもだったら……ってどうしたんだろう。
放課後、屋上で話があるって実咲に言われたから、屋上に行くと……
そこには、実咲と……梅崎くんがいた。
なんで、呼び出されたかわからない…。
「実咲、話って何?」
「ごめん。私が話あるんじゃないの…」
え?
じゃあ……
「すみません、呼び出したのは……俺です」
梅崎くんが……?!