「ハァ…ハァ…」
気づけば、二人の思い出がある丘の上に来ていた。
そこには、小さくうずくまって、座っているちひろがいた。
「ちひろ…?」
「…実咲。どうして?」
「ここかなって気がしてさ…」
「ふーん。」
「空ってさ…なんで綺麗なんだろうね」
何処までも続く空。
「…あたしさ…。大好きな先輩に想いが届いて嬉しかった。だからさぁ…。イジメなんて気にしてなかった。自惚れてたんだよね。先輩は、どんなあたしでも受け止めてくれるそんな気がしてた。」
「ちひろ…」
「イジメにあってる彼女がいるなんて、格好悪いじゃない?だからかな…フラれちゃった…。」
知ってたんだ。
先輩がちひろを見捨てたこと。
「泣きたい時は、我慢しないでいいんだよ?」
「泣くわけな…い……うっ…うぅっ…うわぁー」
始めてだった。
ちひろが私の前で泣いたのは…。
ずっと我慢してたんだよね。
「…ヒック……。もぅ…もぅ誰も好きになんない」
この日を境にちひろに対するイジメが無くなった。
何も変わらない日常に…
変わったことといえば、
ちひろが男子としゃべらなくなったこと。
そして…
男嫌いになったこと…。
「わかった?これが、私が知ってる限りのちひろの過去…」
「……。」
北川先輩が教えてくれた春瀬先輩の過去は、余りにも残酷だった。
大好きな人の為にイジメにあって…
そして、大好き人に裏切られた…。
だから、自分から男嫌いというなの盾をつくり。
一人で自分を守っていたんだ。
「…んっ…。」
「ちひろが目覚めたみたいね。今日の話は、内緒だから。」
「わかり…ました…。」
「ここ…は…?」
「保健室よ!あんた倒れたんだよ」
わかった。
春瀬先輩が北川先輩のことをどれだけ信じているのか…。
北川先輩が春瀬先輩をどれだけ心配しているか…。
北川先輩と春瀬先輩の絆は、思った以上に深く…
また、春瀬先輩の心の闇も深かったんだ。
偶然を装って春瀬先輩と仲良くなりたい。
それが、俺の小さい夢だった。
春瀬先輩は、男嫌いかもしれない。
でも…
そんなの俺には、関係ない。
「先輩の…」
「う…梅崎くん?」
「先輩の男嫌いは、俺が治して見せますから……」
俺は、そう叫んでいて……
気がつくと廊下を走っていた。
ただひたすらに……
がむしゃらに……
俺は、前に進もうとしていた。
春瀬先輩の男嫌いは、俺が治してやるって思えたから…
春瀬先輩。
この世界には、数えきれないほどの男がいる。
あいつだけが、男じゃない。
だから、俺と一緒に頑張っていきましょ?
それが俺の儚い夢だった。
歩けば歩くほど、
辺りは暗闇で……。
叫んでも
誰もいなくて……。
でも、
立ち止まる勇気は
なくて……。
気がついたら
『近づかないでーー』
って叫んでた。
いつになったら、あたしはこの暗闇から出られるんだろう……。
「…んっ…。」
「ちひろが目覚めたみたいね。今日の話は、内緒だから。」
み…実咲…と…
「わかり…ました…。」
う…梅崎…くん?
「ここ…は…?」
「保健室よ!あんた倒れたんだよ」
「そっか…」
倒れた……
そうだ結局倒れちゃったんだ…。
情けないな……。
たかだ、ちょっとの足の痛みだったのに。
「で、実咲がここまで運んでくれたの?」
「ううん。梅崎くんよ…」
梅…崎くんが…?
「そっか、ありがとう。」
「いえ、対したことしてませんから…。」
実咲と梅崎くんは、二人で何の話をしてたんだろう?
「先輩の…」
…………
………………ん?
「う…梅崎くん?」
いきなりどうしたんだろう。
「先輩の男嫌いは、俺が治して見せますから……」
え?
どうして……
知ってたの?
梅崎くんは、そう叫ぶと走って何処かに行ってしまった。