ニコッと笑ったその顔は、まるでマンガの中の主人公みたいだった。



一瞬にして和んだ空気に嬉しさを覚えながら、アタシは前を向き直し、自転車を停めた。




「ところで一之瀬さん…」


振り返った。



居ない



さっきまで朗らかな笑みであたしと話していた一之瀬さんは、今あたしの前から消えていた。



「どこ…行ったんだろ…?」



不思議に思いながら腕時計を見ると、その短針は、9を示していた。




「…え?入学式って…」

一抹の不安を抱えたあたしの耳に、追い討ちをかけるアナウンス。



=只今より5分致しますと、入学の受付は終了します。=



「…ええええええ??!」


今回で入学の受付をしないと、入学式には出られない。



"入学式なんてサボっていいか!!"なんて思えるほどあたしは勇気がない…


第一、初日に欠席なんてその後絶ッッ対浮いちゃうし!!!




「ぁあ〜、もう!!!」




焦って駐輪場から出て、昇降口に向かった。