「本気で?」

啓ちゃんはこれでもかとブンブン首を振っている。もちろん、縦に。
興奮して目まで見開いているから、私が驚いた。

白城 薫はいつもみたく微笑んでいて、その微笑みが、ほんとだっていってくれてるみたいで、嬉しくなる。



「あ、啓ちゃん居たー!」

いきなり聞こえた大きな声に驚き、声のする方に目をやる。

すると、凝った髪型にバッチリメイクを施し、短いスカートをはいた派手な3人の女子が、黄色い声を発しながら啓ちゃんに駆け寄ってくる。


「啓ちゃんにクッキー焼いてきたのーっ」

中でもリーダー的な女子が猫なで声で話しながら、いかにも下心満載なクッキーを啓ちゃんに手渡す。

語尾にハートマークが3つくらい付いてそうな甘ったるい声で話すから、つい咳払いをしてしまう。

嫌がらせのつもりはない。本当に喉にくる声なのだ。


すると、その咳払いが気に障ったのか、黒いアイラインでバッチリ囲まれた目で睨んでくる。

「まじ?嬉しい!みんなで食うね~」

啓ちゃんはお構い無しで答える。
そのクッキーに練り込まれた彼女達の下心を知ってか知らずか、さも知らないかのように可愛く答える啓ちゃんを心の中で真剣に尊敬した。