「真菜…」
無意識に、口からでた名前。
何年ぶりだろう、
会うのは。
こうやって、名前を呼んだのは。
「おまえ、あのマネージャーの知り合い?」
隣で顔をのぞかせた“テツ”の言葉で我に返る。
「…んあ?あ、ああ。まあ…」
すると、テツはいつも以上にキラキラした笑顔を俺に向けた。
「まじで!?俺さぁ、あの子のこと……」
次の瞬間、
俺は、心臓に穴が空いているのかというくらい、
胸が苦しくなった…。
「テツ、本当に?」
もう一度、聞き返す。
テツはまるで高熱を出したかのように、赤面して、俺のほうを向いた。
「…ああ。
俺まじで……
好きなんだわ、あの子のこと」
「そっか」
「なあ、一馬、おまえ知り合いなんだろ?協力してくれっ」
ごめん、できない。
俺も…
真菜が好きだから…
そう、心では言っているのに…
それとは裏腹な言葉が
口からでていた―――
「おぅ、いいよ」
テツは俺をみた。
「まじで!?サンキュー!んじゃあさ、今日さ…――」
テツの言葉は俺の耳には入らなかった。
後悔しても、もう手遅れ。
俺は、そのあとの試合でもそのことばかり考えていたせいか、
ホームランばかり打たれた。
――――――――
そして、
試合のあと――