「…どうしたの?…えーと…陵クン?」



「いえ…何でも…」


瑠璃さんが出した小説は…俺が書いた小説だった。


総がそれに気づいてにやにやと俺の方を見る。


「…この小説、知ってるの?」



「…ええ…知りすぎているぐらいです」



「面白いよねー!Friquetさんの小説ってなんかひき込まれるって言うか…あたし、大ファンなんだ!」


……まじで……?


…超嬉しい。


Friquetって、俺です。



スズメが好きだから、単純にそれを外国語に訳して、Friquet。


どこの言葉だっけ…。多分、フランス語。




「…そうですか」



「うん、あ、陵クンもファンなの?…貸してあげようか?」



「いえ…その…ファンというか……まぁ、その小説は持っているので」


持っているって言うか、兄さんが記念だ、とか言って10冊以上まとめ買いしたからもうその表紙は見飽きた、って感じなのに…。


っていうか…ファン……じゃないんだけどなぁ……。


作者、だし……。


「ふーん…ねえ、コレって今続編出てるよね…?3巻までは買ったんだけど、4巻ってもう発売されてるの?…続き気になるなぁ……面白いけど、新刊までの間がちょっと長いよね。まぁ、いっぱい考えないと、面白い小説は書けないのかなぁ…」



「発売は来月の10日の予定です!必死扱いて書いてるんで、待ってやってください!」



「え?」



「あ…その、まぁ良いじゃないですか…小説を書くのには時間がかかるんですよ…」