見てる人は意味分からない話だったと思う。


だけど。
あたしにはよく分かった。

自分の身が危なくなったら、やれ、と言うことだろう。


でも、もうケンカは散々だから。
恐ろしい目で見られるのは、もう散々だから。


麗鳥は昨日で終わった。
水色の目、ピンクのカラコンで隠した。


そう、あたしは元々水色の目をしてる。
何でかは、分からない。

お父さんは、それが気に入らないらしく、小さい頃からあたしを見ては暴力を振るってきた。

お母さんは、あたしを空気と同じような扱いをしてる。


昨日、話したのが懐かしいくらいだ。


気づくと、指定された教室の前にいた。

「お! 来たか。ホンマ美人やな~!!」

ん?何この人…。


「あ。すまんすまん。

俺は北野さんの担任の山田考(やまだこう)や。
山ちゃんって呼んでや!!」

…担任だったんだ。

「…よろしく」

「ほんじゃ。
俺が声かけたら、入ってこい」

山ちゃんは、入って行った。


教室の中は、五月蠅い。
五月蠅さに、思わずため息が出る。

山ちゃんが入ると、静かになった。

「北野。来い」

山ちゃんは、手招きした。



―――ガラッ

あたしが入ると、みんなは一瞬フリーズした。
そして、騒ぎ始める。
ってか…みんな柄悪い。

「北野。自己紹介」
「…北野彩夏」
みんなは固まった
「き、北野。それだけか?」
「…はい」
「あ、ああ。んじゃ、後ろの席の好きな席に選んで座って…」
後ろの席…。
全部開いてる。…何?
じゃあ、窓際。

あたしが窓際に腰掛けると、山ちゃんは「おお~!やっぱそっちか!!」とだけ言って出て行った