祖母の周りには沢山の大人たちがいた。線香の匂いが私の鼻をとらえた。さっきはあんなに苦しそうだった祖母が、今はとても幸せそうな顔をしている。誰も口を利くものはいなかった。
 私の肩に乗ったピーちゃんが「バファリンドコ、バファリンドコ」と鳴いた。母のすすり泣く声が段々と大きくなり、それが伝染したのか大人たちはみんな泣き出してしまった。それでも私は最後まで泣かなかった。そしてようやく皆が落ち着き始めた頃にまたピーちゃんが鳴いた。
「メソメソスンナ、ナイテセカイガ、カワルカヨ」
 それを聞いた母が振り返り、ビックリした顔でピーちゃんを凝視していた。母の目にまた涙が溢れてきたが、グッと堪えたのか、それがこぼれ落ちることはなかった。