大島は事前にバッグに金を詰めて、客のもとへ行く度に伝票の裏やポケットに金を忍び込ませては客に差し出して交渉をした。



「……おい!お前ら…!」
男が辺りを見回して客全員と視線を取ろうとするが、誰一人とも視線が合わない。


「……わりぃ……でも俺…全員にその話を振ってるって思わなくてよぉ…」
カウンターの客がようやく口を開いた。


それに続いて客は一人また一人と重たい口を開いていった。

「…見せ金として俺に300万くれたんだ…」
「……私もだ…」
「……ぼ……僕も…」
「…あ゛ぁー、もうお前らいい!つまりてめぇら全員こいつの金に踊らされたって訳だろ!」


コクリと何人かが頷いて下を向いた。







「……わりぃか…」
途端にカウンターの客が動いた。



「……お前だって同じことやっただろ…!」
「………」
男は黙った。