首が刈られたと思うと、その腕はぐったりと下がり 辺りにカビのような匂いを放ちながら 赤い液体が一面を染めた…


兵士や刃物にその血が付着したとしても すぐに床に向かって流れて行く…。


鎖から解放されるまで体を前に出した。

永井には 大きく目も口も開いて何かを言おうとしている浅川の顔が見えた。
黒の短髪で 角ばった輪郭はとても女性には受けが良さそうな感じだった。



そしてもちろん浅川の あの言動に対して、客も従業員も黙ってはいなかった。


「なぁ…オーナーさんよー…。浅川が言ったこと…気になるんだけどよー…!」
いち早く解放された灘が ここにいるほとんどの人が口にしたかったことを言う。

「……おーい!灘ー…あんま でしゃばんなよォー…」
一人の男が部屋のドアを開けて入ってきた。部屋中の視線がそちらに向く。

それが横田だと知ると灘は表情を変えて言い返した。
「るせ!!!!」
未だに横田とは仲が悪いようだ。
横田は ことの始終を部屋の外で聞いていた。


「なあ!!浅川はあいつを差して『騙されるな』って言ったんだ!どういうことか説明してくれ…!」

横田もその答えを待つ。



「…………契約書に目を通さなかったのか…?」
「……あ?」
「…お前らがここに仕事しに来る前に承諾してもらった雇用契約書…。第八条に『個人の私情に 雇用者の承諾なしに深く関わることは禁止とする』とあったはずだが…」
「……汚ねぇー…!!」
「何とでも言いたまえ。もちろん契約違反と断定した場合は即『クビ』だからな。それをお忘れなく…」
そう言うと 兵士と共に部屋を後にした。

「…ちきしょう!!!」

横田もあきれたように部屋を出て行った。