兵士がカウンターの客から離れたところだった…








大島は大きく息を吸うと……



「…ちょっと待て…!!」



兵士の足が止まる…。客、従業員、そして遅れてオーナーがゆっくりと顔をあげた。

「……おいっ…!」
「…わりぃな…」
大島はそれだけ言うと話を始めた。


「………その箱をもう一度見せてくれ…!」





静寂が一瞬包むと 客たちがざわつき始めた。

「…しつけーぞ!」
「……いちいち区切んなよ…!」
「…オーナー、早く始めようぜ…!」
「………そ…そうだ…!次だ…次!」
カウンターの客も野次に交じった。



しかし大島は箱から目をそらしていない。


大島が本気だということは永井もオーナーも分かっていた。


そしてゆっくりとオーナーは立ち上がって右手を挙げた。

部屋中 飛び交っていた野次がおさまる。

「……両者の言い分は分かった。私が見るからに彼は本気だ。しかし、いちいち投票の際に止められるのも君たちは気にくわない。………………そこでだ…………もしあの箱の中に余分な投票用紙が入っていなかったら……彼、大島を『クビ』にするとしよう…!」

その瞬間 客の歓声と拍手がドッと湧き上がった。