その場合はいくらこちらが仕掛けてもボロは出さないだろう…。
しかしあの人たちが ただのオーナーと客という関係だけだったら勝ち目はある…
大島はそこまで考えた上での作戦だった。
あの客は不正をしたということで オーナーが黙って見逃すはずがない…
また たとえグルだったとしても 自分にとって不利な状況になったら仲間を切る……
オーナーはそのような性格である…大島はそれに賭けた…。
この賭けに負けると自分はかなり危機的状態に陥る…
死を覚悟した方がいいだろう…
そして投票ボックスを持った兵士がカウンターへと近づく…
入れろ…入れろ…!!
そして…次の瞬間…!
……………スッ……
カウンターの客の左手がテーブルから離れたかと思うと 投票ボックスにすぐさま投入した…
「……大島っ…!」
体を思いっきり前に出して大島の顔を覗いた…。
「………かった…」
「……………えっ…?」
大島は目の前を向いたまま呆然としており、口元でわずかに読みとれるほどの小声で言った。
そして永井の方を向き はっきり言う…
「……………見えなかった……」
自分たちの周りだけやけに静かになる。
「………永井…見えなかったよ……」
大島の表情は暗かった。
永井は今の状況を把握した。
「…そう………………………でもしょうがないだろ…。このまま訴えずにスルーしといた方が安全じゃねぇか…?」
大島は前を向いて目を見開いたまま考えた…
………静かだ………
そして大島の上唇がゆっくり開く…
「……あぁ…そうかもな………………………………でも………………」