頭を前に向けると永井はためらいながらも、質問した…
「……あの……」
「…ん?」
「……二葉さんは………この仕事……なんで辞めないんですか……?」
「…え!?」
その時 二葉に一瞬だが見たことのない表情が浮かんだ…

「……なんでそんなこと聞くんだ…?」
「………あ…いや……俺に辞めるよう勧めてくださるのは嬉しいんですけど………なんで……二葉さん自身は辞めないのかなぁ…と…」

二葉に少しの沈黙が見られたが、その重い口をゆっくりと開けた…

「……あぁ……そうか…………。…………実はな………私には帰るところがないんだ…」
「…え……!?」
「………私がここに来て一週間経とうとしていた頃だったんだけど…………」

二葉が暗い表情で話し始めた…
「…オーナーに辞表を出して残り1日というときに、急遽最終日にオーナーから1日休みをもらえた。でも………………………オーナーは知っていて休みをくれたらしく……うちに帰ってみたら両親とも………………死んでいた………」
「………そうだったんですか…………すいません……悲しい事を思い出させてしまって……」
「……ううん…いいんだ…。交通事故だったみたいだから…恨むにも誰も恨めないんだ……。」
「…それでまだ働くことをオーナーに……?」
「……あぁ……。」

二葉は目を閉じて頭の中で両親が亡くなる映像を映し出していた…
それを見た訳ではないのだが 二葉にはその瞬間の光景が想像できた…