その緑色の瞳は恨めしそうに彼女を見、赤く小さな唇はとがるように前に突き出されていた。


その様子を見ていたマリーは思わず吹き出してしまった。


「姉上!私がシンディにお説教されるのがそんなに面白いのですか?」


シンディとはヨーゼフの後ろで腕を組んでいる侍女の名前だ。


マリーは「いえ、そう言う訳では…」と言いながら眉尻を下げて自分を見ている弟に微笑んだ。


マリーとヨーゼフは容姿は異なっているものの、れっきとした姉弟だ。


似ているのは肌の白さと通った鼻筋ぐらいだろう。


マリーが5歳の時に母が亡くなった後に娶った妃との間に出来たのがヨーゼフだった。


新しい妃はマリーを実の娘のように愛してくれていた。


マリーも『お母様』とは呼べぬものの、本当の母娘のように仲睦まじく育った。


だから、妃が来て一年程して、ヨーゼフを身ごもったと聞いた時には親子皆で喜んだものだ。


マリーは可愛い弟に問いかける。


「朝早くから来て、いったいどうしたの?」

ヨーゼフは思い出した様にハッと眼を見開いた。

「姉上、今日は誕生日ですね。おめでとうございます!」

ヨーゼフはニッと笑い、背に隠していた両手を前に持ってきた。


そこには、色とりどりの草花が手いっぱいに握られていた。